仙台高等裁判所 昭和25年(ナ)8号 判決
原告 関口新吾
被告 福島県選挙管理委員会
一、主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、請求の趣旨
原告訴訟代理人は、「被告が昭和二十五年六月二十九日、福島縣耶麻郡山都町選挙管理委員会がした町会議員の当選の効力に関する決定を取り消した裁決(眞部政力外一名の訴願に係るもの)はこれを取り消す、訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求めた。
三、事 実
「福島縣耶麻郡山都町において町制施行に伴い昭和二十五年四月二十八日町会議員の選挙が施行された結果、原告外二十一名が当選者と決定されたが、右当選者の中原告は得票数七十三票で最下位となつたもので他の当選者は得票数七十五票以上を得たものである。また候補者眞部政力は得票数七十二票(他に無効投票とされたもの四票がある)で次点者となつたものである。しかるに眞部政力外一名は右無効投票とされた四票の中二票(檢甲第一、二号証)は有効な投票であるとし從つて眞部政力の得票数は右二票を加えた七十四票であると主張して、山都町選挙管理委員会に対し原告の当選の効力に関し異議申立をし、同委員会は昭和二十五年五月十六日右異議申立を理由なしとして却下したが、右訴外人等は更に被告に訴願したところ、被告は同年六月二十九日右訴願申立を相当とし山都町選挙管理委員会の決定を取り消す旨裁決し同年七月三日付縣報でこれを告示した。右被告のした裁決の理由は「係爭の二票はいずれも鉛筆書であつて、そこに付記せられた点は單なる汚損とは認められないけれども、一票はその打点が線という程のものでなく、又他の一票の点も特にそこのみ色素が濃いとは認められない。從つてそれは書き終れば点を打つ当該選挙人の習慣によつて生じたものであり、もし然らずとするも少くとも候補者に意思を通ずる所謂有意的な打点と認め難い性質のものであつて、それが候補者の氏名に関係のない打点であること勿論である。」というにある。しかし右係爭の二票は山都町選挙管理委員会の異議却下決定において正当に指摘するように、「眞部政力の氏名の右下に黒点のありとする投票二票の中、一票はその点というのが約二粍の長さを有するむしろ線ともいい得べきものである。筆勢を止めるために打点する習慣性のものとは認められない。又他の一票の点はその円圏内の左上部が色素著しく濃く光沢を有しているので右下方より左上方に向つて突き上げるように打点したものであり、これ又慣習性の打点とは考えられず無論單なる汚染とは認められない」ものであつて、地方自治法第四十一條第一項第二号にいわゆる他事を記載した無効の投票である。よつて右係爭の二票を有効投票として前記山都町選挙管理委員会の決定を取り消した被告の裁決は失当であるから右裁決の取消を求めるため本訴に及ぶ。」と述べた。(立証省略)
被告代理人は主文第一項同旨の判決を求め、答弁として、「原告主張の事実中本件係爭の投票二票が他事を記載した無効の投票であることは爭う、右係爭の二票はいずれも原告主張の裁決書記載理由の如く有効である。その余の事実はすべて爭わない。」と述べた。(立証省略)
四、理 由
原告主張の事実中、本件係爭の投票二票が無効の投票であるとの点を除きその余の事実は当事者間に爭がない。
そこで本件係爭の投票二票が無効か有効かについて審案するに、右係爭の二票であることに爭のない檢甲第一、二号証を檢すると、右投票はいずれも鉛筆書で「眞部政力」と記載しその右下に点が付記されているのであるが、右「眞部政力」の記載部分はいずれも候補者眞部政力の氏名を記載したものであることが明瞭である。また右付記の点はいずれも氏名とは関係のないものといわなければならないが單なる汚損とは認められない。しかしその大いさは線という程のものでなく色素の著しい濃い部分があるものとは認められずその色彩形状位置等からして、普通字句を書き終つた際にその下部に打たれる習慣性の句点であつて他意がないものと認めるのが相当であつて、かような普通の習慣性の句点はこれを候補者と通ずる有意の記載その他他事を記載したものということはできない。從つて右投票はいずれも候補者眞部政力に対する投票として有効なものといわなければならない。
よつて本件係爭の投票二票の無効であることを主張して被告のした裁決の取消を求める原告の本訴請求は失当であるから、訴訟費用につき民事訴訟法第八十九條第九十五條を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 谷本仙一郎 村木達夫 猪狩眞泰)